おんばさま
「おんばさま」像は西方地区の大杉観音堂に安置されている。一畳敷きほどの堂内には中央に石造りの観音像、向かって左側に「おんばさま」が置かれている。「おんばさま」は老婆の姿をした木製の座像で、高さ約50センチメートル、差し渡しの直径が25センチほどの大きさがある。目を大きく見開き、歯を剥き出しにするという激情の形相を浮かべ、片足の膝を立てている。
『会津のおんばさま』などの著者もある研究者の石田明夫氏によると、片足を立てた座像は、昔の出産の方式である座像の姿を模していることから、安産祈念が目的だと説いている。同時に三途の川の奪衣婆に見立てた信仰もあり、飯豊山や吾妻山などでは女性が立ち入らないようにする「結界」の役割を果たしているという。
この木像の背中には墨で銘文が書きこまれている。
湯殿山行者龍海
弘化三年請■
正月吉日
沼■■■中
施主民■利之
大杉観音にお参りに来る地区住民は少なくないが、「おんばさま」の木像が特に注目されていたわけではなく、10年ぐらい前から関心が持たれるようになった。
<奥会津書房『三島町散歩』より>