鬼渡り権現の堂(延命寺の裏)
旧分校へと続く道の左手斜面に建つ。木造の堂の脇に「鬼渡り権現」と記した杭が立っている。
この堂に関しては記録がなく、また言い伝えにも多少の違いがあるが、渡部某氏の先祖が建てた産土神(うぶすながみ)を奉ってあり、渡部姓の家の守り神であるといわれている。堂が古くなったため立て替えたという説と、もともと堂がなかったので建てたという説がある。いずれにしても現在の堂が建てられた時に鬼渡り権現(おにわたりごんげん)と表記され、延命寺の管轄となったという。本尊は延命寺にあるといわれており、産土神が寺に納められたのは神仏習合の時代であったためかと考えられる。堂は施錠されており、ご開帳されることはない。
昔は子供が生まれると丈夫に育つようにと参拝した。現在は渡部姓に限らず他の家でも元旦参りなどをしているが、雪の深い頃なので歩くのに難儀し、参拝する人も少なくなっている。
「鬼渡り」という呼称の由来は村の古老に尋ねても不明であった。小山地区に「諏訪神社 鬼渡神社」と併記された神社があるが、小山地区では諏訪神社と呼んでいる。また、会津一円に数カ所の鬼渡神社がある。
<奥会津書房『三島町散歩』より>