三島の民話 花咲かじいさま
花咲かじいさま
むかし昔、あったけどぉ。じいさまとばあさま、めごぉい犬かってらったけどぉ。ある日のこと、その犬がじいさまとばあさまんどご引っ張ってなぁ。「ここ掘れワンワン。ここ掘れワンワン。」ってほえんだどぉ。そんじぇなぁ。掘ってみたれば。ヤレヤレ黄金がザックザックでてきだどぉ。ザックザック出た黄金ガラガラ~って瓶ん中サあけたれば隣のいじわるじいさまが、ガ~ラリショと来たと思ったら、づない声で怒鳴いやったどぉ「何してそんなに銭もうけたどぉ」「おら家の犬が掘れ掘れって言うがぁ掘ってみたのやれ」「そんじゃその犬貸せっ」「貸さねぇ」「貸せぇっつうのに」「貸さねぇ」貸せ貸せどって、無理やり引っ張ってたぁ。ここ掘れども言わねぇのに掘ってみたれば、瓦の欠けたのやら一つ目小僧だの蛇だのばっか出てきたどぉ。怒って犬ぶっ殺して埋めっちまったどぉ「犬返してくんつぇ」つったら「あぁだ犬殺した」「何処さ埋めた」「ここさ埋めた」って言うからじいさまは、墓しるしに松ノ木植えたどぉ。したれば、その松ノ木がズンズンンズンズンンにわかに育って、何年もたたねぇうちに大木になっちまったどぉ。それで臼を彫って餅ついたれば、また、そっから金がザクザクとでたどぉ。そしたら、今度ぁ隣のじいさまが臼借り出したぁ。餅つきしたれば、泥水なんぞ、茶碗の欠けたのばっか出たどぉ。いじわるじい様臼割ってもやしちまったどぉ。そんじぇ泣き泣き臼の灰汁もらってきてなぁ「ちりりんぽりりん黄金の花ぁ」ってまいたら、ほんとに見事にさいたどぉ。こんだぁ隣のじい様それ聞いて我も灰汁のこったのかき集めて「ちりりんぽりりん黄金の花ぁ」ってやったけんど、殿様の目サばっかりかかって、ちぃっとも花がさかねぇでなやれやっぱり、何でも正直しねぇどなぁ。ざっとむかしさげぇもうした。
掲載協力 故小松トラヨさん(西方)