三島の民話 大黒様の話

大黒様の話

十二月の九日に大黒様が旅に出たって。そして、大黒様は神様みたいな人だから、あっちこっちで御馳走をいただくからなぁ。腹やけとか胸が熱くなったりして、胃が悪くなっただべぇ。ある村の道下の川端で、大根洗いしてた女子の人いただど。そんじぇ、

「胸焼けして困ってっかぁ。その大根一本くんにぇがぁ」

ちゅったら、

「うちのご主人はとても厳しい人で、この山のような大根も何本、何本って数えてらっから、ほかさ分けることできねぇがらぁ」

って言うもんだから、大黒様は、

「そうかそうか。悪い悪い。そんな厳しいご主人様では、後でそなたが難儀するもんなぁ」優しくそう言わって、川端離れたど。したらば、その女子の人は山の大根また洗いだしたべぇ。したらばちょうど股がり大根で二本くっついてるがなさ手かけたど。

「大黒様、大黒様。ほれほれこの大根の片っぽうだったら、厳しい旦那様も怒んねぇべがらなぁ。これ半分おだっから、これでも良かったらなっし」

って分けてくっちゃど。

「ありがとうなぁ。この股がり大根で助かったぞぉ。そなたの思いは忘れまいぞ。これからは良い暮らしができるぞ」

肩を優しくたたいてくれらってなぁ。大黒様また出掛けらったど。ほんに女子の人は、それからっちゅうものは良い暮らしになって、一生安楽に暮らさったど。

そんじぇ、十二月の九日には神棚さ股がり大根供えて、あったかいご飯上げ申すようになっただわ。

「十二月九日は、股がり大根忘れんなよぉ」

なんて言われ言われしたなぁ。

ざっと昔、栄え申した。

掲載協力者 杉本ミツイさん(桧原)