三島の民話 疫病神
疫病神
むかしむかし、川があってな。そこに渡し場があっただ。
なんでがっちゅうと向こうからこっちさ川渡る人がいたわけよ。
ある時、その渡し場の渡し守の舟のとこさ、貧乏くせぇ爺さまが来ただど。
「おめぇは何者だ」
ちゅったら、
「わたしは病気の神様だ」
ちゅったど。そんだから渡し守は、
「病気の神様くち、病気はやらせる神様が」
どって聞いたわけや。したらば、
「いかにも、疫病神だわい」
ちゅったのな。そんで渡し守は、
「渡してやれねぇ。この村病気になったら大変だがら」
ちゅったら、
「んだ。おめぇの家だけ寄らねえがら、渡してくれ」
と言うんだど。そんじぇ、
「おれの家、どうやってわがんだ」
どって言ったら、
「ん~ん、なら、何かしるしのあるもの、門口さかけておけ」
ちゅうだど。
そんで渡し守は考えただなぁ。
「んだ。そんじゃら、おれの家の門口さ、カゴさげとくがらな。カゴさがった家がおら家だがら、その家さは寄んねぇでくろ」
「ああ、わがった。おめぇの家さは寄んねぇ」
と決めたど。
「そんじゃら明日渡してやっから、
明日の何時にここさ来らっしぇ」
どって言うと、渡し守はその日の夜のうちに、村中の家回って門口さメゲエをかけてもらったど。
次の日、疫病神は川を渡してもらったが、どの家にも門口さメゲエがかかっていて、どの家にも病気をおいていぐよなかったど。
それからこんだどの家でも、カゴな、メゲエをさげて、疫病神除けするようになっただど。
ざっとむかし、栄え申した。
掲載協力者 小柴さん(西方)
再話 五十嵐七重さん(西方)