三島の民話 地蔵浄土
地蔵浄土
むかぁし、あったど。あるところに良い爺さまと婆さま、また悪い爺さまと婆さまが互いに暮らしてたど。ある時、良い爺さまと婆さまは団子こしゃって食ってたど。したら一つ残っちまったど。婆さん食え、爺さん食えなんているうち、団子がひとんじぇ外さ転がりだしたど。やれやれ爺さんが追っかけたど。
「団子、団子、どこまで、どこまで」
ったら、
「すんじゃの御山のこっけらぶきの堂まで、堂まで」
って、どこまでも転んでいくどな。追っかけでいったら地蔵様立ってで、地蔵様の口さ、ぱっくりしょと団子が入っちまったど。不思議だと思ってだら地蔵様が、
「爺さま、なんともしょうねぇ。団子口さ入ったから食っちまった。つぐないに金儲けさせっから、今晩ここさ泊まれ。鬼どもがここでバクチ打ちやっから俺の裏さ隠っちぇろ。頃合い見て、鳥のまねしっとせ鬼の野郎みんな銭置いて逃げっからな。それ持ってっていいぞ」
そう言わっちぇ隠れてだら来たど。鬼だれ大勢来てバクチ始まった。ジャラージャラ始まったど。酒飲み飲みなぁ。そんじぇ頃合い見て、
「トテコッコーッ」
ちゅったら、鬼だれ、
「やれ大変だぁ。朝んなるわー」
銭みんな置いて逃げてったど。爺さまは地蔵様にお礼申して銭もらって家さ来たど。
「婆さん、こういう訳であった」
なんてしゃべって、
「隣の爺さまに聞かれっと悪いがら、しんずかにあけろよ」
婆さま喜んでジャラジャラーンとあけっちまったのな。ちげぇねぇ、隣の意地悪爺さまだれ聞きつけて、
「なんだどぉ。ずもねぇ金儲けしたんねぇがぁ。銭の音聞けぇだぞ」
どって来たど。そんじぇその話したら、
「んじゃーおら家もやってみんべ」
どって二人で団子こしゃって食って、一つ残して、団子転びもしねぇのに足でコロコロけったぐって、地蔵様んどこさ行って、地蔵様の裏さ隠っちゃど。すると鬼どもがいっぺぇ来てバクチ打ち始まった。ほんで意地悪爺さま、待ちぎんにぇで鳥の鳴きまねしたど。こっぱやくまねしたべぇ。
「ゆんべなも下手なにわとり鳴くど思ったら、今来たばっかなのに変だな」
どって地蔵さまの裏さ来て爺さまんどこめっけだど。
「こらぁ、ゆんべなも下手なまねしてなんちゅうふてぇ隠居だぁ。おもさもひっぱたいてしまえ」
なんて大勢にたたかっちぇ金儲けどこのさたでねぇ。あっちこっち血流して家さ帰ったら、婆さまも待ちぎんにぇで外さ出たら、爺さまがあーあーどって泣きながら戻ってきたど。
「やっぱり人まねはできねぇなぁ。ろくなごどねぇがら」
それがらは意地悪やめて、良い爺さま婆さまになったど。
ざっと昔、栄え申した。
掲載協力者 杉本ミツイさん(桧原)