三島の民話 兄弟二人と山姥
兄弟二人と山姥
昔は、よぐ猟師っていう、キツネとかタヌキとか、山からとってきて食ったりなんかしていたんだべぇ。食い物いっぱい背負って山さ行ったど。
兄さんの方が、その日なんぼ歩いても歩いても、何もなかったんだど。しまいに夜になっちまって、家さ戻れなくなっちまった。困ったなぁど思って、そうしたどごに、大きな木のどごさ、ぶっつぁげだ提灯がぶら下がっていで、その中から山姥が出て、糸車出して糸引き始めた。これは大変だど思って、鉄砲持って行ったど。打ったげんじょも、ちっとも当だんねど。山姥はあくびなんどして、
「あーあーあー」
と言ってんだど。いま一発打って、また打って、もう一発になって、
「はぁーこれしかねぇ」
ど思って打ったげんじょ当だんねぇがら、しょうねぇがら逃げだんだど。なんぼ逃げでも人間どは違うがらかなわねぇわ。そんでついに食わっちまったんだ。
舎弟の方は、なんぼ兄さん待っちぇでも来ねぇんだ。
「来ねぇなー来ねぇなー」
ど思って一晩待ってだど。明日になっても来ねぇがら、こんだぁわがも兄さんみだぐ食い物いっぱい背負って行ったんだど。
そしたらやっぱしその日も何もとんにぇくて、暗くなっちまって、今のような魔物が出てきたんだど。
提灯が下がる・・
糸引きする・・・って。
そしてこんだ、これもあと一発になっちまったがら、神様に祈って、そしてこんだ思い出したごどに、
「提灯さぶでば当だる」
っていうごど思い出してなぁ。山姥の姿でなくて提灯打ったど。そしたらこんだぁ当たって、山姥しとめたんだど。
わがの命は助かったげんじょ、兄さんが山姥に食わっちまって、鉄砲は投げである、骨はそごらに散らばってる・・・。兄さんは死んじまっただ。
山姥と鉄砲ぶちの話。
ざっと昔、さけた。
元話 故小柴モトさん(西方)
文章 五十嵐七重さん(西方)