三島の民話 屁ったれ嫁
屁ったれ嫁
昔、あるどごろに、とでも屁ったれの娘がいでやったど。そんで、誰も嫁にもらい手がねぐていたが、まぁ縁があって優しい家さもらわれでいったど。ほんで、あんます屁たれっと恥ずかしいど思って耐えでいだれば、だんだん顔色が悪ぐなって、
「なんだぁ、あんまし気つかうなぁ。顔色思わしくねぇぞ」
って姑母さまが聞ぐがら、
「おれ~、あの~、屁たっちぇの我慢してんだぁ」
って言うど、
「ほんなの気にすっこどねぇがら、遠慮すねぇでたれろ」
って言わっちゃど。
「ほんじゃ辞儀すねぇで、たれべぇ」
どって、まぁ、尻めぐって、ほしてパ~~っとたっちゃれば、舅父っつぁまも姑母さまも皆吹っ飛ばさっちまった。
「いやいや、こんじぇはししょうねぇがら、ちょっとすすりこんでくろぉ」
ったれば、そうがぁどって、ス~~っとすすったら、こんだぁ嫁のゲス元まですすらっちぇしまったど。
「いやはや、こんじぇはししょうねぇぞ。いでもらったってししょうねぇがら」
づ訳で、姑母さまが送っていぐべど思って、舟場さ行ぐど、船頭が舟出せねぇで難儀してんだど。その屁ったれ嫁が、
「なんだよぉ」
って聞ぐど、船頭さん、
「こういう訳で、舟動がせねぇで困っていんだ」
「なぁんだ、そったらもの、おれ屁たっちぇ吹っ飛ばしてけっから」
どって言うど、
「何言ってけづがる。このぉ、あまのくせしてぇ」
ちゅわっちぇ、嫁、がぁらりゲスふんむぐって、パフ~~っとたっちゃらば、はぁ、舟も船頭もいっぺんに走りだしたど。
「いや~なんだって、これは、はぁ、とでも助かった」
って行ってしまいやったど。舟も行ってしまったごどだし、考えでみっと、なんぼ屁たっちゃつったたって、使いようによっては、とでも役に立つがら、やっぱ、おん出さんにぇど思って、姑母さまは送んねぇで家さ戻ったど。
そいがらは、だんだん良ぐなり、食うものもいっぺぇ食わねぇでいっと、そんなに屁も出なくなったりしたが、柿の木さも登んねぇで、下がら屁たれっと、柿みんな落ちてしまうが、とでも臭くて食わんにぇごどもあったりしたが、まぁ、家内中仲良く暮らしたっちゅう話だ。
ざ~っと昔栄えました。
話者 杉本ミツイさん(桧原)