三島の民話 利口な嫁
利口な嫁
むがぁしむがしなぁ。あるところに、とでも頑固で昔人なもんで、口やがましくて、手にかねぇおばんちゃいたど。ほんに内外、誰さでもやがましくて、わがの言いでぇごどは、ひとっつも我慢どってねぇ、嫁さなんぞは側で聞いてらんにぇほどだっけど。んだから村のたちぇは、
「あの鬼ん婆、ほんに良ぐねぇぞ」「嫁ばっか、むぞうせぇわぁ」「誰か教えでやんねぇど、嫁の立つ瀬ねぇわ」「いやいや、意地張っていまっと悪ぐなんべなぁ」
そうだ陰口が、おばんちゃの耳さ入ったど。いやはや悔しくなったおばんちゃ、
「こーら、にしは村のたちぇが俺のごどなんだかんだ言ってんの分がってんべぇ。気持ちよがんべぇわ」「・・・・・」
「なんとかしゃべってんろぉ。にしの腹ん中裂いて見てみでぇなぁ」「・・・」
なじょうなごど言っても、口答えひとつしねぇがら、ますますごせやげただべぇ。
「こーら、村のたちぇ、俺のごど鬼ん婆なんて言ってるそうだがら、俺の歌さ上の句つけて詠んでみろぃ」
そう言うど、裏の蔵の屋根のほうさ顔向げで、
おにんばなどと 人は言うらん
「ほーら、上の句つけてやってみろぃ」
したらば、若い嫁さん、なかなか愛嬌がいいだなぁ。にこにこしながら、おばんちゃのほう向いで、
仏にも まさる心を知らずして
鬼ん婆などと 人は言うらん
そう言ったど。おばんちゃ、嫁の顔見で、はぁーど一息ついで、にやっと笑うど、それからはほんにいいおばんちゃにならって、仏様のようだ、本当の仏様だっていわれるようになっただど。その歌一つで、なおっちまったちゅうだなぁ。
ざっとむかし、とんてんかんてん、とんからりん。
元話 故五十嵐ミヨノさん(西方)
再話 五十嵐 七重さん(西方)