三島の民話 人食い神様

人食い神様

ざ~っと昔あったど

この村の神様は、人食い神様どって言わっちぇなぁ、毎年まいどし娘んどご鎮守様さ納めんなんねくて、大弱りしてだどぉ。

人身御供しねっか、村中荒らされるは、家はぶっこわされるは、流行り病は出て大事な人は死ぬべぇし、ほんによぐよぐ大弱りだどぉ。そんなある日の事だっけぇど。髭モジャモジャの侍が奥の方がら来ゃったどぉ。村前ぇさ来たら、誰っちぇも人が居ねぇ、家のめぇで泣き声してんだど「おいおい何で泣いでんだぁ?」声かけたじゅうなぁ

「ほんに困っただわぁ。今日はこの娘んどご神様さ上げ申さんなんねぇだわぁ」

「何、馬鹿言ってんのぉ。どごの神様やれ」

「おらほうの神様はだいぶ昔がら人身御供に娘上げ申さんなんねぇだ」

「ほうだ馬鹿な事あっかせ。俺が代わりになっからな。その代わり『太郎坊』ちゅう犬めっけで来ぉ。太郎坊だぞ」

太郎坊なんちゅう犬どごに居べぇ、あすこが?あの村が?たんねんに、たんねにたんねでその犬せで来たどぉ。侍は

「おおにしが太郎坊が?よしよし俺といっぺんに頼むぞ。さて村の衆、俺ど犬さどまんま食しぇでくろ。腹ごしらえして行ぐべな」そう言うどすごだままんまごっつぉになっと村の衆の用意した木ん櫃ん中さ入ったどぉ。

「侍さまさすけねぇがよぉ。神様おごってなおさらひでぇめくうであんめぇ」

「なになに人食う神様なんて居る訳が無い。俺と太郎坊を信じて待っておれ」

バタンと木ん櫃のふた閉めてもらって、村の達ぇ神社森させでったどぉ。

せぇがら村の達ぇはビグサグしながら石段の下さ隠っちぇでだどぉ。

やぁ~れやれ生臭ぇ風吹いできたぁ~境内の桜の木ザワザワ~~と揺れだぁ 

ギ~~ッお宮の戸音たでで開いだぁ~木ん櫃のそばさ寄ってきたのはずな~いヒヒであったどぉ。

「太郎坊には教えらんにぇギシッギシッ太郎坊には教えらんにぇギシッギシッ」きたど

木ん櫃ん中の侍と太郎坊、キ~~~ッとして待っちぇだ。したらばそのヒヒは「太郎坊には教えらんにぇ~」どってふた開けだぁウ~~~ワワワン太郎坊むしゃぼりずいだぁ。侍は刀でバシッバシッやっつけだ。「ウギギギ~~~ウ~ワワワンウギャ~~ウギャ~~」太郎坊とヒヒの大格闘だ。侍もヒヒが高ぐ跳ねれば刀でやる、下さ降りれば太郎坊に食いかがられるじゅうして、ヒヒの野郎退治されだどぉ。

こんじぇ穏やが穏やが

ざっと昔が栄えました

元話 故目黒 某さん(滝原)

再話 五十嵐七重さん(西方)