三島の民話 だんごどの
だんごどの
あった~どぉ。むかしじい様どばあ様ど居だどぉ。
じい様は、ばあ様のこしゃった(じねぇーだんご)背負ってったどぉ。山さ着ぐどしぇんけんに仕事して
「さて中飯だ。ばぁのだんごごっつぉになっか」
ちゅって包み広げだらコロコロコロコロだんごがころげでったどぉ。
「だんご殿だんご殿どごまでどごまで」追っかけだらだんご殿は「せんぞの宮までこけらぞうの堂まで」ってころげんだどぉ
「だんご殿だんご殿どこまでどこまで」「せんぞの宮までこけらぞうの堂まで」
って転んで行ったどぉ。したら下の方に古ぼけたお堂があって、地蔵様がやったけど。そして地蔵様がそのだんごくっちまっただどぉ。
「やんだやんだ地蔵さん、そのだんごは俺の中飯だがら返してくろぉ」
「おお悪いくっちまったがらとでも返すようねぇ。今晩俺んどごさ泊まってぐど、おめぇに良いものくれでやる、泊まってげぇ」そう言ったどぉ
「んじゃ泊まんべぇ」ちゅうたら、地蔵様だんだん暗ぐなったがら
「爺さんそごさ居だでは駄目だ。俺の衣の陰さかぐいよ」そして
「いいがぁ暗ぐなってくっと、ここさ赤鬼青鬼鬼達いっぺぇ来る。そんじょぎは黙ってろよ。おれ合図したらトテコッコ~ど鳥の泣きまねしろ。そうしっと鬼達朝んなった大変だ~どって行っちまぁがら出て来ぉよ」ちゅうわげで隠れだ
あっつがらもこっつがらも赤鬼青鬼宝物や銭えっぺぇ持ってお堂さ集まったどぉ。酒盛りして唄ったり踊ったりにぎやかになったらば、地蔵様が合図したんだど。んじゃがらじい様「トテコッコー~」って真似したらば、鬼だぢあわでで「あっ 今一番どり鳴いだ。早く帰んねぇど人間来っと大変だ」鬼帰る支度した
「トテコッコー~」ちゃせだら鬼達は
「そうれ二番どりだぁ三番どり鳴けば夜が明ける。人間様来んぞぉ」ちゅうど大急ぎで宝もなにもかも置いで逃げっつまったどぉ。したらば地蔵様が
「爺さんはぁさすけねぇぞ。これ鬼の置いでった宝みなにしさやるわ。なぁに鬼のがんだがら、遠慮しねぇで持ってげ」
いやはや爺さんは大喜びでもってかえったどぉ。ばあ様も大喜び、二人んじぇ喜んでだら、隣の悪い爺さんとばあ様が聞き付けて
「よしっ爺さんおらんつもんじゃぁ行って宝物もらって来ぉ」ちゅうわげで山さ行ってだんご転ばしても転ばねぇ。無理矢理ころばして
「だんごどのどごまで~」
言っても転ばねぇ。仕方ねぇけっとばしけっとばしてって地蔵様の口さムリムリ入れて食わせだど
「何だぁ地蔵様だんご食ったな。早く食っただんご返してくれ」たら、地蔵様
「いや話が違うおらは食いだぐねぇのにおめぇはムリムリ口ん中さおっこめだだ。返すよねぇなぁ」
「ほう~そうだったら今夜俺んどご泊めてみろ。昨日のじい様さやったようにやってみろぃ」なんて威張ってんだどぉ。地蔵様は仕方なくて陰の方さ隠してやったが赤鬼青鬼いっぱい出て来たら、地蔵様の合図なの待っちぇらんにゃくて「コケコッコー~~夜が明けたぁ~」たら鬼達が「いや一番鳥のはずねぇ。今来たばっかしだに、はぁっから鳴くはずねぇ。そごらに誰がわっさしてんだべぇ」って捜さっちゃだどぉ。そうしたらば地蔵様の衣の陰で悪いじい様めっかっただどぉ。
いやはやよぐよぐ鬼にひでぇ目にああせらっちぇ、泣き泣きもどったどぉ。
ざ~っとむかしさけぇもうした
元話 西方にて(話者不明)
再話 五十嵐七重さん(西方)