三島の民話 きつねとかわうそ
きつねとかわうそ
むかしむかしあったどぉ
きつねどいうものはうそこぐだぁ。かわうそちゅうのは正直だぁ。
冬なぁ、きつねがかかうそのどごさ魚くい来たどぉ。かわうそは魚取るのが上手だからなぁ、いっつも来んだわぁ。
「お~い 魚焼けだがぁ?」
「おお焼けだぞぉ、ほれほれ」なんて馬鹿にされでもきつねと仲よ~ぐしてだのなぁ。あっ時な、きつね、かわうそんどご馬鹿にして
「かわうそどん どうした」って寄ってった
「はぁ 良ぐ来た。今 魚焼げだばぁかりだ」したれば、きつねいったそうだ
「俺ばっかりごっつぉになっていらんにぇがら、俺家さも来ぉ」かわうそ喜んで行ったどぉ。めずらしがんなぁ~呼ばっちゃなの
「お~い来たぞぉドンドン」
「……」「あれ?寄んぞぉ」戸開げだらきつね天井向いでる。いごがねぇ。ごっつぉにならんにぇがらトットトもどって寝だどぉ。
したらば、朝げ早ぇどごきつね来て
「おお悪いがった。ゆんべは天井の神様に用たのまっちぇ、愛想らんねがった」
「はぁ そうだったのがぁ。んじゃらば、魚食えよ」
「いやはや 悪いがったぁ。今夜はじぇってぇ来ぉよ」ってたぁど。かわうそまた行ったべぇ「お~い来たぞぉドンドン」「……」
戸開げだらきつね、下向いでいごがねぇだどぉ。かわうそは、首っ玉ふりふりもどっと寝だどぉ。
したらば、朝げ早ぇどごきつね来て
「おお悪いがった。ゆんべは地の神様に用たのまっちぇ、愛想らんねがった」
「はぁ そうだったのがぁ。んじゃらば、魚食えよ」
「いやはや 悪いがったぁ。にしは何でこうだに魚取り上手なだぁ?」
こう聞いたじゅうだなぁ。そんじぇ、かわうそ言ったぁ
「わげねぇ、そうだごど。朝げ早ぐ川さ行って、氷ぶっかいでしっぽ川さ入っちょぐど、魚集まってとれんだわぁ。やってみらっしぇ」ったど。
「それは良いもんだぁ」
きつね、朝早ぐ川さ行って、氷ぶっかいでしっぽ川さ入っちぇだどぉ。したればしっぽが凍みづいで、とれなぐなっちまったべぇ~
「キャンキャン キャンキャン」
泣ぎ泣ぎしっぽ引っ張ったがら、もげだ~もげだ~尻尾もげでキャンキャンって泣き泣き、山さあがってったどぉ。
ざっとむかし さげだ
元話 故佐藤新一郎さん(西方)
再話 五十嵐七重さん(西方)