三島の民話 兄弟二人と山姥
兄弟二人と山姥
昔あったど~。昔は猟師どって、キツネとかタヌキとか山がぁとってきて食ったりなんぞしていたんだべぇ。
あっとき兄の方が、食う物いっぺぇ背負って山サ行ったんだど。しかし、その日はなんぼう歩いても歩いてもナ 何もとれなかったどぉ しまいに夜んなっちまって、家サももどれなぐなっちまったぁ
困ったなぁど思っていだらば、でっかい木んどこサぶっつぁげだ提灯がユ~ラリどぶらさがっただどぉ。 したらば その中からヒョ~~ッちゅっけが山姥出てきて糸引きはじまったぁどぉ
ガ~ラガラガラ ヒョ~ッヒョ~ッ
ぶっつぁげだ提灯ン中がら 糸が出てくる 出てくる
ガ~ラガラガラ ヒョ~ッヒョ~ッ
山姥チラッと兄んどこ見て にやりど笑えば ぶっつぁげだ提灯ン中がぁ 糸が出てくる。 兄は脂汗でてきた、なじょうにがすんなんねぇど思って鉄砲ぶったどぉ
ひとっつもあだんねえどぉ。 山姥はあくびなんどして ア~ ア~なんてにやりど笑うだどぉ。兄あわくってド~ン ド~ン何発もぶったどぉ。あだんねぇ、おっかなくて逃げだどぉ。なんぼぉ逃げても人間はそういう魔物にはかなわねぇわなぁ、そんじぇ つい 食わっちまったどぉ。
さで 舎弟の方は、なんぼぉ兄さんまっちぇても来ねぇんだぁ
「来ねぇなぁ 来ねぇなぁ」一晩中待ってだどぉ。朝んなっちまった、舎弟は兄さんの食い物いっぱい背負って鉄砲持って、玉入っちぇ行ったんだどぉ。
ガサガサ ガサガサ 山ん中サ行ったどぉ。したら やっぱり獲物は捕れめぇし兄はどこさもいねぇべし 心細くなっていだら、でっかい木んどこサ、ぶっつぁげだ提灯がさがったどぉ。そっから魔物が出てくる、山姥は糸車出して糸引きはじめたどぉ
ガ~ラガラガラ ヒョ~ッヒョ~ッ
ぶっつぁげだ提灯ン中がら 糸が出てくる 出てくる
ガ~ラガラガラ ヒョ~ッヒョ~ッ
山姥、チラッと舎弟んどこ見で にやりど笑えば ぶっつぁげだ提灯ん中がら糸が出てくる 出てくる。 舎弟は無我夢中で鉄砲ぶったどぉ。したが 山姥はニタニタ笑ってんだどぉ
「神様 なじょしたら よがんべぇ」玉も一発しか残ってねぇがら、祈ったどぉ
「んだっ 糸も山姥も提灯がぁ出だ、んだっ 提灯だぁ~ズッドォ~ン」とぶった
「ギャ~~~ッ」ちゅうど 山姥んどご死止めたんだ
舎弟は助かったが兄さんは山姥にくわれっちまって鉄砲だけ残っただ。
鉄砲ぶちの言い伝え、思い出した舎弟が、兄の仇をとったむがしな
ざっとむかしさげぇだどぉ
元話 故小柴モトさん(西方)
再話 五十嵐七重さん(西方)