三島の民話 蕎麦口上

蕎麦口上

 とざい と~ざいと鳴り物をとめおきまして、そそうな奴がまかり出で

 ほめるようこそ知らねども お蕎麦でさっと ほめましょう 

 さして 目出度い祝いの蕎麦 蕎麦ほど目出度いものはない

 いらびの いらびしこの蕎麦は 夏の土用に種をまき 二日三日で目を出して

 十日二十日で花が咲き 蜂や蝶々にもてはやされて実を結び

 その名も蕎麦太郎三つ角と名付けられ 秋の土用となりぬければ

 石白五郎左衛門のざんげにより 絹やふるいの助の手にかかり

 鉢の村へと引き出され お湯と水とでこねられて

 四角四角の盤上で ねって まるめて たたかれて

 折って たたんで 素性良く 定規正しくつくりあげ

 お湯で茹で上げ 清水洗い 口に入れれば こっき こっきのつるつると

 千代を言祝ぐこの蕎麦は 誰にもまけないかつおのつゆで

 そこでクルミも おそばでお役にたちたいと

 誠に縁のふかねぶか ちょっと辛いがつぶがらし

 縁の糸ひく納豆で 御客様のお望みしだい

 たぁくさん たぁくさん おあがりくださ~い

小松順吉さん(西方)