三島の民話 弥三郎かが

弥三郎かが

むかしなぁ、おっかねぇ鬼ばんばが居ただぁ。弥三郎かがって言うだどぉ。

おれらこめらんどぎは、なんでかんで「めげぇ」を「とんぼ」さ掛けた。

…「めげぇ」つうのは「豆通し」つう、農具だヨ。せ~がら、「とんぼ」つうのは

今で言う「玄関」だが、昔は玄関の入り口に「便所」もあっただヨ…

むがしなぁ、弥三郎かがっつう鬼ばんば~いただどぉ

ヒュウ~~ッつう吹雪さのって村々の家のぞっこんで、行ぐだど

「泣ぐこ いねぇが~~」

「きかんぼう いねぇが~~」

「言う事きかねぇ、やづ いねぇがぁ~~」

 昔の暦の師走八日だ~(十二月八日 の事)来んのわな。

「腕 もぐぞぉ~~ 腕 とんぞぉ~~」って吹雪さのって来る山姥だっけど。

ヒュウ~~ッ ヒュウ~~ッ ビュウ~~ッ つうど

「それ 弥三郎かか 来たぞっ。泣ぐなっ泣ぐなっ」って母ちゃん言うど

「とんぼさ めげぇ かげだがら さすけねぇ。泣かねぇで声たでんなよ」

ばあちゃんそう言って背中なでてくれたな。

そうすっとおっかねぇ気持ち、ちぃっと無くなって妹の手にぎんの。そうすっと、妹もにぎりかえしてエコッ と笑うんだ。

「じいちゃん なんで めげぇ かげんの?」ったら

「なんでもなぁ、弥三郎かがつうのは人間だっただど」

弥三郎つう鉄砲ぶちの母ちゃんでな

弥三郎鉄砲ぶちさ行ってなかなか家さもどんなくて心配ぇで心配ぇで吹雪ん中さがしさ出だど。頭はボサボサんなって手ぬげぇもすっとんちまって鬼ばんばのようになって弥三郎さ行きあだっただど。したら弥三郎は母ちゃんだど思わねぇで鬼ばんばだど思って母ちゃんの片腕きっちまっただど。んじゃがら母ちゃんは人間でなくて 鬼ばんばになっちまっただど。んじゃがらなぁ・・

「じいちゃん、んじゃがら 鬼ばんばど 戦わねぇで おとなしくしてんの?」

「んだよ鬼ばんばが通りすぎるまで、キットしてんだぞ。弥三郎かがはめげぇの穴っぽが千も万もの目玉に見えでな、おっかながって他村さ行ぐだど」

「ほうら〜また来たぞ!ほうらばちゃんのひざさ抱がされ」

「ばぁちゃ~~ん」

「よしよし いい子だ いい子だ、にしゃだれは、良い子だなぁ」

  師走八日の吹雪さのって 弥三郎かが 行っちまったぁ~

  行っちまったぁ~

ざっと むかし 終わるんじゃ 

 

元話 故五十嵐寅雄さん(大石田)

再話 五十嵐七重さん(西方)