三島の民話 猿むこ入り
猿むこ入り
むかし あったど~
こんな山ん中さ三人の娘もったじいさんいだど
千刈り田つぅ でっか~い田もってらってなぁ、水見さ行ったど
「いやいや これは容易でねぇ。この千刈り田さ水かげてくれるやづいだらば、娘三人居んだがら、どれでもくれんだがなぁ」
つったらば猿が出て来て
「じい様 何が言ったなぁ」ったの
「あー雨は降んねぇべし 千刈り田さ水かげるは容易でねぇ。誰んじぇも水かげてくっちゃら嫁くれんべぇわ」
「えーっ 本当 ? ほんじゃら おれ 水かげる」っつっけがどんどん水かげてくっちぇ、たちまち水かげだど じい様は困っちまったど
「いやいや 猿にはあんな事言っちまって~嫁だれ、やんだやんだ つうべな~」
じい様向こう鉢巻きして、ウーウーって寝でだど。したら末っ子
「じいちゃ~ん 何 心配ぇしてんの?」
じい様言い出せねぇでだら、一番おおきな娘きて
「じいちゃん 何がしたの?」って来た
「うー こうこう こう言うわげで、千刈り田さ水かげでくっちゃのは猿なだわ。お前ぇ嫁さ行ってくんねぇが?」ったら「おーーやだ やだ 」おごってプイプイ出てったどやっぱ 二番娘ぉも おごっちまったど。したら三番娘ぉ「そんだら おれが行ぐ。心配ぇしゃんな」つうど猿がおがたになって、山の猿どごさ行ったわげだど。
そんじぇ猿どごさ行っても、節々に親んどごさ礼に来んだどぉ
さで三月の節句んなって、
「さる殿 礼に行ぐがら じいちゃんに餅ついでぐべ。みやげに持ってぎでぇ」どって餅ついだ。したら猿が「丸めで持ってぐが?」った
「いや~じいちゃんは丸めっと、手くせぇ~ってやだがるわ」
「んじゃ なじょする ?」
「重だくて悪ぃが 臼ごでら背負ってってもらいでぇ」
「おー よしよし。背負ってぐど喜ぶべなぁ」つって出だど
山おっちぇぐど、やっぱり三月ど言えば昔は旧の三月だがら、桜の花が川端ぁさ咲いでだどぉ
「おーー良い花だごど。うちのじいちゃんは、とでも桜の花が好きだよ。
あの花 ひと枝」ほしいなぁ」ったのな
「よしっ。そんでは採ってやる」ちって臼下さおっけで登んべどしたら
「あーその臼おろすっつうど、じいちゃん土くさいがらやだつう」
「そうが、じゃら背負ってのぼる」つうどチョロチョロ上っと
「この 枝がーー」つう
「まっと 上の枝っ」って、だんだん上さあがらせで、枝の細~いどごさ登らせで
「この 枝がーー」ってるうちに ドサーーーン 臼どいっしょに落ちで、そのまんま臼の下敷きんなって死んちまったど。
そんで娘は、猿がどごがらのがれで帰ったどぉ。
ざっとむかしさげぇだ
元話 故杉本ミツイさん(桧原)
再話 五十嵐七重さん(西方)