三島の民話 五月の節句の話
五月の節句の話
むかしなぁ 山奥に、たんだ一軒家あってな、とっつぁま居だだ。
「この山奥では不自由だぁ。かが(嫁)欲しいが、まんま食ねぇがな いねぇがなぁ~」なんて願っていだど。何ぼう何んだたって、飯かねぇでかせぐやつなんど、居るはずあんめぇになぁ~
「あの~私は まんま食べませんから、よろしく」なんて美人なやつが入りごんだど。
「なんだ まま食ねぇのが?願ったり叶ったりだぁ」つうど一緒に泊まったど。二日たっても三日たっても、まんま食わねぇでドサクサ ドサクサかせぇでんだど。
おかしなやつも居るもんだど、不思議で
「おれ ちょっこら他所さ行ってくっから、留守居してでくろ」つうど二階さかぐっちぇ様子見っただどぉ。したれば あのおなご
「いっ日も まま食ねぇかがなんてあるんでねぇ」グズグズ小言じいじい、でっこらまんま炊ぎはだったど
「あららら~何すんだべぇー」とっつぁま見でだ。
したら まんま握りはだった~幾つも幾つも握ってでっこら握って~こんだ顔が大蛇んなったどぉ。大蛇だも でっかい大蛇口こ~開げでポンポン ポンポン たったかみたかに一釜の握り飯入れっちまっただどぉ
「はぁ 何と、やれやれこれは大変だ。しめぇに俺まで食われっちまぁ。なじょしんべ」
おっかねぇが知らんぷりして、戻ったふりして
「おめぇ悪ぃけんど、どうが帰ってくろ」つった
「ほうがよ~おめぇにも都合あんだべがらなぁ、んじゃが 俺にも頼みがあんだ」つうだど
「頼みって何だど?」
「空っぽの味噌こが くんつぇ」
「こが なの持って行げ。でっけぇがら荷縄で背負ってげ」つうど荷縄で背負わせでくれべぇどしたど。したら
「手ぇ 引っぱってくんつぇ」つうがら 手おさえで起ごすべどしたらグイラショーーかがぁにひっぱらっちぇ、こがん中さ入っちまったど。かがのやろ とっつぁま、こがごで背負ってゴンゴン ゴンゴン山さ行ったど。
しかもなぁ グズグズ グズグズ じいじい
「世の中に考えでみだってわがんべぇ。まんま食ねぇ嫁がどごに居る!」
とっつぁま ふるえでだ。
「あーくたびっちゃ。ひとやすみだ」つうど こが降ろして休んだ。
「おれは食われっちまぁ。困ったなぁ 神様ぁ 神様ぁ」
したれば こがの中さフジつるたれできたど
「あっ ありがたい!」ちょいっとつるさつかまって逃げだど とっつぁまドンドン山の上さにげで、別な方がら家の方さ跳んだど
「ああーー逃げられっつまった~~」かるぐなって気ずいで 今度ぁ本物の大蛇んなって ダーダダダーー追っかけだら、はるか向こうにとっつぁま跳んでんだど
「待で~~待で~~」追ってくる
「ああーやんだぁーー」とっつぁま菖蒲とヨモギのやぶさダダッっと隠っちゃど。大蛇は
「ああー残念だぁ。これは残念だぁ~とでも臭くて入ぇらんにぇ」つうど
大蛇は行っつまったど。
「ああ これは蛇除げだ。良いもんだなぁ。また、来ねぇつうごどもねぇ。家さ持ってって蛇除げにしんべ」
とっつぁまは菖蒲どヨモギ軒先さ挿したり 風呂さたでだりして欲っかぎはやめで魔よけしたつうわ。
五月五日の日であったがらなぁ、他の達ぇもやるようになっただわな。
ざっとむかしさかえもうした
元話 故五十嵐ミヨノさん(西方)
再話 五十嵐七重さん(西方)