三島の民話 グズとカメ
グズとカメ
あったどぉ。グズとカメつう、つっとばかし、たんにぇがな居だど。しかも、隣あぁせに暮らしてだど。んじゃがら、いっつも一緒だっけど。あっ時なぁ、グズの母ちゃん、
「グズ!父ちゃんの法事だがら、方丈様よばってきてくろ」った。
「あーーい、お寺だな?」
「んだ、寺さ行ぐど黒い衣装着て、高いどごさいらっからな」
「ん、わがった」
グズとカメは、タッタガタッターはねでったど。
「あーっ、グズ~方丈様、あそごにいらったぞー」カメづった。
真っ黒なカラス、槙の木の上さいだど。
「あ~、いらったぁ~。方丈様~~おらえの法事さ来てくんつぇ」
「ガァ~~オ、ガァ~~オ」とんでったどぉ。
「母ちゃん、行って来たぞ」
「ほうがほうが、何してらったぁ?」
「やっぱ高いどごさ居らったっけよ」
「ほうがー、そんじゃらカメど二階のあま酒おろせ」
「あい。あま酒ぇ、おれ達も飲まれんの?」
「ああ、くれっともやー。瓶っこさ入ってから、静かに持って来ぉ」
グズとカメは、二階ぇがら降ろすわげや、二人ぇズズーーッとしっぱってがら、ハシゴ段降ろすごどになったぁ。グズとカメさ言ったど。
「カメ~、ハシゴおりで、下がら瓶のゲスたがげぇ」
「アイキタ、わがった。まっちぇろよ」な~んて下がら手のばした。
「いいがぁ、カメェ。おれにしがどご見えねぇがら、ぎっちりどゲスおっつがめぇろよ」
「何?グズ~どごおっつがめぇんの?」カメこまっちまった。
「早ぐ早ぐ、ゲスだぁ、カァメ、瓶のゲスおっつがめぇろー」
「ああーい」つうどぉ、瓶っこがら手ぇはなして我ぁのゲスつかめぇだだど。
「あーーーっ」ガッジャーーンどって瓶っこぶっくっちぇ、あま酒流れっちまったどぉ。
「やれやれ、方丈様さ出すよなぐなったなぁ~、しょねぇ、しょねぇ」
母ちゃん、おごんねぇで、
「そんじゃら、急いでマンマ炊ぐがら、ふたんじぇ火の子ん守しろ」
つうどナベ囲炉裏さかげだど。木~燃やしてっとナベの中ぁ、にぎやかになったど。
「んーー?」カメぇ、ナベのフタとったらマンマの湯がちぃっとになって、グズグズグズグズ煮えでっとー。
「グズグズ、グズグズ」
「んーー?あいっ」グズはナベさ返事したどぉ。
「グズグズ、グズグズ」
「あいっ、あいっ」
「グズグズ、グズグズ」
「あいっ、あいっ・・・この野郎ぉめぇ!」おごったグズは囲炉裏の灰を十能ですぐぅづぅど、マンマの中さ
ぼっこんちまったど。
あれあれ・・間んにゃあねぇなぁ、まんにゃあね。
ざっとむかしさげた。
元話 桧原の某氏 (桧原)
再話 五十嵐 七重さん(西方)