三島の民話 鶴のおんがえし

鶴のおんがえし

むかしむかぁし、あったそうじゃ。
あるどごに、じいさんとばあさん、仲良く機織りして暮らしてあったどな~。
「じいさんよ~、糸たんにゃぐなったよ。買って来てくんつぇ」
「おいきた、そんじゃら笠ど蓑売ってがら糸買ってくんべぇ」
「ああー、そうしてくんつぁれやぁ~」
じいさんな笠ど蓑売って、糸いっぺぇ買ってもどってくる途中だっけどよ、鶴が罠さかがって、せづながっていだど。
「あれあれ、もぞうせぇごど、罠さかがったのがぁ~、ああ~よしよし、はずしてやっからあばれんなよ」
「ほ~らほら、きーーっとしてろ。いいがぁ~こんじぇさすけねぇぞ。ほぉら、跳ばれべぇや」
つうど、放してやったど。鶴はうれしいだべぇ、じいさんの頭の上ウーラリウーラリ三べんまわっていったど。じいさんも快くてなぁ~、家さもどっと、ばあさんにしゃべったどぉ。
さて、ある日のごとよ。晩かだな、若い娘が来ただど。
「今晩泊めでくんつぇ」
あんまりめごぉい娘だごで、じいさんもばあさんもうれしくてなぁ。
「いぐづ泊まってもいいぞぉ」
ったど、したら、
「じいさんとばあさんには子どもがないがら、どうか私を娘にしてください」
なんつうだどぉ。大喜びで裏の小屋で機織り教えだどよ。
娘は、じっき覚えで毎日毎日機織りしては、じいさんばあさんどご助けでくっちゃどぉ。出来た布はじいさん売って、糸買って来て、じんぐりじんぐり良い暮らしになったそうだ。ある時、娘は、
「今日は、何時もとちがう良いものを織るがら、決して中をのぞかねぇでください」
つっただなぁ。
「はいはい、のぞかないよ~」
とは言ったがなぁ、ふたりは顔見合わせで、おそらおそらど見だだどぉ~。
たまげたなぁ~小屋の中さは裸どうぜんになった一羽の鶴が、わぁがの羽をぬきぬき一生懸命、布を織ってだだどぉ。
むぞうせぇごどに、自分は痩せで裸になり・・・・。
「ごめんなぁー」
じいさんばあさん泣き泣きあやまったどぉ。娘は布たがって出てきてなぁ、
「この前、助けていただいた鶴です。この姿を見られではここに居るよねぇです」
「ごめんよ~、ごめんよ~」
三人は泣いだどぉ。
「じいさんばあさん、大変おせわになりました・・・」
と、なきなき飛んでったどぉ~。罠がら助けでもらった時のように、じいさんばあさんの頭の上ウーラリウーラリ三べんまわって行ったどぉ。
じいさんばあさんも泣き泣き見送り、別れを惜しんだそうだ。
鶴でさえ人様に世話になった恩は忘れない。
ざっとむかし栄え申したど
元話 故・二瓶アツ子(西方)
再話 五十嵐七重(西方)